9月議会から12月議会の閉会日までは、あっという間でした。
その中で、今回は質問と請願を取り上げましたが、結構長いため、項目毎に整理しております。
【本会議での一般質問について】
子どもを犯罪から守るために
昨年の11月に緑区の商業施設で子どもへの強制わいせつ事件が発生しました。この事件について調査を行い、事件の特性を踏まえて、今後、子どもを犯罪から守るために、県がどのような取り組みを推進するべきか、という観点から質問を行いました。
<緑区で発生した事件>
犯人の男は、昨年11月某日午前、施設内の本屋で遊んでいた3歳の男児に対し、声をかけ、抱きかかえ、近くのトイレの個室に無理やり連れ込みました。そして、男児の首を絞めて気絶させて、わいせつな行為に及びました。命は無事でしたが、精神的後遺症が懸念されています。
犯人には懲役6年の実刑が下されました。
また、犯人には、同種前科があり、平成5年から平成23年までに合計3回服役していました。
前科では、6歳から14歳までの子供5名が、声かけ、道を尋ねるフリ、抱きかかえ、首を絞めるなどの手口を用いられ、連れ込んだ先で性犯罪の被害を受けました。中には出所直後の犯行も複数含まれていました。
<性犯罪事案の発生状況>※強姦・強制性交等・強制わいせつ罪とします。
・本県性犯罪の認知件数:平成29年・360件
→ そのうち、13歳未満の子ども被害:42件
・刑法犯全体の認知件数:平成25年・7万7904件に対し、
平成29年・5万2974件(約32%減少)
→ 刑法犯全体の認知件数が減少傾向にあるにもかかわらず、性犯罪の認知件数は、ほぼ横ばいで推移(13歳未満の子どもが被害の場合を問わず)。
<13歳未満の子供に対する性犯罪等の前兆事案>
性犯罪等の「前兆」とみられる声かけ・つきまとい等の事案の認知件数は、平成31年11月末現在で1384件(前年同期比で234件増)となっています。つまり・・・、
→ 県内で、一日に約4件発生もしている計算となります・・・
<前兆事案での処罰強化を・・・>
重大犯罪への発展を防ぐために、早期に行為者を特定して措置することが重要ですが、更に、他府県のように、条例で処罰範囲を広げて、検挙を強化すべき必要性を問いました。
県からは、「 学校等での防犯講和による啓発活動等やボランティア等と連携した見守り活動や、「ちば安全・安心メール」などでの積極的な情報発信に努めている。
また、性犯罪等の前兆事案については、その態様に応じて各種法令を適用して取り締まっているほか、刑罰法令に抵触しない行為については、指導・警告の措置を執るなどの先制・予防活動を推進している。
子どもを性犯罪等の被害から守るための条例の制定については、他府県の制定状況を踏まえつつ、その必要性等を含め、県関係当局と連携を図りながら協議をしていく。 」との回答でした。
「検挙」をより踏み込んで考えたいと思います。
例えば、「お菓子をあげるから、こっちにおいで。」などの「甘い言葉で惑わす声かけのみ」で終わった場合(通行人に目撃されて止めたケースなど)は、内心にその後で強制わいせつ行為に及ぶ意図を持っていたとしても、刑法の強制わいせつ未遂罪での処罰は難しく、また、軽犯罪法や迷惑防止条例での処罰も困難となります。つまり、検挙はできません。
果たしてこのようなケースを指導・警告に止めてよいのでしょうか?
冒頭の事件の前科等でも、その手口で前兆事案に類似する行為が用いられたようですが、仮にそこで止まっていた場合は・・・?とリアルにイメージすることが、子どもに対する性犯罪者の特性を捉えるためにも必要であると思います。
ここを処罰可能とする規定を設けている他府県があります。
「関係当局と連携を図りながら協議」をしっかりと進めていただきたいところです。
もちろん、数字は公表できないものの、性犯罪等の前兆の事案の多くで、何らかの措置を講じているようです。ただ、やはり、検挙までの割合はそう高くはないようです。
<地方再犯防止推進計画の策定について>
再犯に関する統計で次のようなデータがあります。
法務総合研究所の2016年の調査報告によりますと、調査対象事件とされた裁判の確定から「5年」が経過した時点での、対象者1484人の全再犯率は20.7%、性犯罪再犯率は13.9%とのことです。
また、性犯罪前科が2回以上ある者の性犯罪前科の内容を見ると、同一類型の性犯罪前科のあるもの者の割合は、小児わいせつ型では「84.6%」と高いとされています。
冒頭の事件では、同種前科を多数重ねて3回服役していました。
現在、県では、計画の策定に向けて、更生保護、福祉、警察・司法などの関係者で構成された「更生支援推進協議会」を設置し、更生と支援の課題把握のために実態調査をし、支援体制についてモデル事業で検証して、施策の検討を進めています。
これを受けて、子どもに対する犯罪を犯した者について、先に挙げたようにその特性を踏まえた議論の追加、さらに大阪府の条例のような積極的な取組みが必要ではないかと問いました。
この点、大阪府の条例は、①18歳未満に対する性犯罪を犯し、刑期満了日から5年経過前に大阪府内に住所を定めた者は、その住所等を知事に届け出(H24.10~H30.9まで135件)、②届出者には、社会生活サポートや、性衝動に焦点をあてた専門プログラムを提供して社会復帰を支援、③性犯罪等の前兆事案とされる、防犯活動などの正当な理由がないにも関わらず、甘い言葉で惑わす、嘘をついて欺くなどの「子どもに不安を与える行為」、言いがかりをつける、つきまとうなどの「子どもを威迫する行為」を禁止・処罰(先ほどの所)などの特徴を持っています。
県からは、「計画の策定にあたり、更生と社会復帰には、性犯罪を含め、犯罪の類型や、犯罪をした人のそれぞれの特性に応じ、住まいの確保、就労の支援、医療や福祉サービスの利用など、様々な支援が必要になる。こうした支援の実効性を確保することは、重要な課題と考えている。
今後、規定整備のあり方についても、協議会の意見を聞きながら検討していく。」との回答がありました。
率直に、本県は、法律の制定を受けて、再犯防止のための支援と取組みをこれから検討するような状況にあります。
だからこそ、地方再犯防止推進計画の策定にあたっては、子供への性犯罪という特性に着目して、積極的な支援を行っている大阪府のような取組みを期待したいところです。
また、制度上では、①13歳未満の子供を対象とする暴力的性犯罪について、受刑者の「出所情報」や、当該受刑者の「性犯罪再犯防止指導の指導密度の別」や「再犯防止のために参考となる事項」を有する警察との連携や、また、②刑事施設で実施した性犯罪再犯防止指導の実施結果及び保護観察所において実施した性犯罪者処遇プログラムの実施結果を相互に引き継いでいる保護観察所との連携がありますので、これらを具体的に想定し、より実効性のある施策と計画していくように県当局には要望しました。
<防犯カメラの設置促進について>
防犯カメラの重要性は明らかであり、冒頭の事件でも、犯人検挙に防犯カメラが貢献し、公判でも映像が証拠提出されました。また、県内で発生している性犯罪等の前兆事案における犯人の特定にも活躍しているとのことです。
・県警調査:市町村・自治会・商店街が設置している防犯カメラの台数
平成28年3月末:2,069台
→(+306台増加)→ 平成30年3月末:2,375台
県によると、「市町村や自治会等が設置する防犯カメラに対する県の補助制度は、昨年9月に通学路等の見守りにも対応できるように対象を拡大している。
今年度は、昨年度の補助実績229台に対し、現在、1.6倍の369台の補助を見込んでいる。引き続き、市町村等の防犯カメラの設置を支援していく。」とのことであり、着実に増えています。
また、松戸市の小学生女児殺害事件を受けて、県警が独自に設置する高画質の防犯カメラ(千葉駅など5駅周辺)も12月から運用が開始されています。
<ドライブレコーダーの設置促進について>
平成26年6月に市原市内で発生した女子中学生の誘拐未遂事件では、一般男性の車のドライブレコーダーの画像が事件の早期解決につながるなど、ドライブレコーダーには、設置者自身のための運転記録を保全するという、導入当初に想定していた本来の役割を超え、いわゆる「動く防犯カメラ」としての役割もあることを昨年12月議会で指摘し、公用車への設置促進を求めました。
続いて行った、本年2月の予算委員会の質問では、県が保有する車両に、おおむね5年で設置を完了するとの答弁でした。
その後の進捗は・・・
・一般公用車のドライブレコーダー設置
平成29年12月:61台(設置割合約4%)
→(+347台増加)→平成30年12月:408台(設置割合約27%)
・警察車両のドライブレコーダー設置
平成29年11月:200台(設置割合約11%)
→ 平成30年12月:800台(設置割合約43%)
→ 平成30年度末までの予定:1330台(設置割合約72%)。
となっており、警察車両については、前倒しで計画を達成する見込みであり、今後も、一般公用車全車への計画的な設置を確実に進めるとのことです。
なお、本県では、青色防犯パトロール車へのドライブレコーダー設置に対する助成の拡充や、映像提供に関する協定をタクシー会社や運送会社と締結するなどの取り組みを進めています。
<誉田駅前に交番の設置を要望>
隣の鎌取駅と土気駅には駅前交番があります。
そして、誉田地域では、「たかだの杜ニュータウン」や、約26ヘクタールの産業団地の建設、更に駅南口の整備に向けた取り組みが進んでいますので、今後の駅前交番に対するニーズは益々高くなると考えています。
イノシシ対策 ~県の捕獲事業を緑区でも、棲み処対策は一斉に~
有害鳥獣による農作物被害の状況ですが、平成29年度は被害金額3.7億円、面積453haであり、そのうちイノシシによるものは被害金額1.89億円、面積247haにも及んでいます。
いのししの生息範囲は拡大傾向にあります。
県のいのしし対策計画においても、以前の計画で「前線地域」に指定されていた緑区ですが、現行の計画では「拡大防止地域」に格上げされています。
千葉市の捕獲数も、平成29年度の12頭から、今年度は11月時点で40頭を超えたようです。
<県の直接捕獲事業の状況と緑区での実施について>
市町村が実施する事業への助成に加えて、平成27年度からは「生息域の拡大を防止するために」県が直接捕獲を行う指定管理鳥獣捕獲等事業を開始しましたが、生息密度が比較的低い、分布外縁部にあたる成田地域及び長生地域での実施に止まっています。
そこで、緑区でも県の直接捕獲の実施を求めました。
県からは、「実施地域は、地元市町村や有識者等からの意見、生息状況調査の結果等を踏まえ、設定しているが、イノシシの分布外縁部にあたり、近年、捕獲数が増加している千葉市についても、県による直接捕獲を検討する。」との前向きな回答がありました。
そこで、全県での対策に加え、生息域の縮小を目指すために、計画で拡大防止地域となっている緑区を含む千葉市での実施を強く要望しました。
県による直接捕獲の実施状況については、平成29年度は、次の通りです。
・成田地域(成田市、香取市、多古町、芝山町)
委託:千葉県県猟友会(1296万円)
→ わな50箇所100日間
目標14頭 23頭を捕獲
・長生地域(茂原市、長柄町、長南町)
委託:株式会社ALSOK(1296万円)
→ わな50箇所100日間
目標66頭 27頭を捕獲
民間会社にも委託の可能性があることから、猟友会の人的負担にも配慮することが可能であると考えます。
<イノシシすみか撲滅特別対策事業について>
今年度初の事業で、いのししが住みにくい環境の管理が大事であるとして、耕作放棄地の草木を刈り払い、棲み家をなくすとともに、農地に近づけないようにして、農作物被害を減少させることを目的としています。
事業の実施状況と不参加の市町村への対応を問いました。
耕作放棄地の刈払いの状況(H30.11月末)は、県南を中心に17市町・112地区で117ヘクタールとのことでした。なお、千葉市は、4地区で15.4ヘクタールの予定とのことです。
また、県からは、「事業の実施は、農作物被害の状況や地域の要望等を踏まえて、市町村が総合的に判断するものの、イノシシによる農作物被害を減少させていくためには、「被害対策地域」や「拡大防止地域」だけでなく、被害が出始めている「前線地域」も含めて、一斉に取り組むことが効果的であることから、今後、県としては、事業を実施していない市町村に対しても、積極的に取り組むよう働きかけていく。」との回答がありました。
事業実施期間を3年と設定している中で、県下での一斉実施が最大限の効果発揮になるものとして尽力を求めました。
【請願第102号「千葉県がんセンターへのハイパーサーミアの電磁温熱治療器の早期導入による治療の拡充」を求める「請願の採択」と「附帯決議」】
<紹介議員になりました>
電話で最初の御相談をいただいた時、県内には電磁温熱治療器がある施設がないために、都内まで通院しているとの切実な状況を知り、何とかしたいという気持ちで一杯になりました。
執行部に状況を確認すると、がんセンターへの導入を否定的に捉えている印象を受けた一方で、深い検討には至っていないようでした。
そこで、こちらで調査を進めていくことを決意しました。
いただいた治療器に関する簡単な資料に目を通しながら、これが本県にない理由をいろいろと推察した時に、自身の感情に流されることの危険性や判断の乱れを回避することを強く意識しました。
ですから、請願提出のギリギリのタイミングまでは、請願者には直接会いませんでした。
そしてまた、私が最終的に紹介議員を引き受ける条件として、徹底して科学的客観的な見地から、合理的に導入の是非を判断すること、また、後述するような様々な時間的制約を理由に紹介議員となるため、所属会派の結論が最終的にどうなるか分からない点の御理解をいただきました。
提出時には、署名は21,769筆にもなっていました。
請願者やその御家族・関係者の想いと努力の証でもあります。
とても重く受け止めました。
<電磁温熱治療の導入についての我々の分析>
会派では、過去のがん対策条例制定プロジェクトチーム内に調査チームを設置し、専門家からのヒアリング、医師向け専門書等の分析、導入している病院の視察などの検証作業を重ねました。
時間的に厳しい中での限られた範囲の調査ではありましたが、3つの観点で調査結果を整理しました。資料の添付や関係者等の発言の記載は省略していますが、以下は、検討メモのほぼ原文となります。
1.温熱療法についての医学的観点
基本的に、放射線治療法や化学治療法などに加えて(+α)行うもの。
・ 1990年から保険適用がある。1996年には適用範囲拡大。
効果はあるようだが、エビデンスレベルとして、高い報告は少ない。
低いレベルのものはそれなりにあるようだが、弱い印象を受ける。
エビデンスレベルについては、標準治療においても、ガンの部位・進行度・治療法・患者の特性などを組み合わせた多量の選択肢の中から試験を行うため、エビデンスレベルの分類が低いものしかないケースもあるようである。治療法としての推奨強さの分類・表示によるグレードのランク付けでは、エビデンスは一要素にすぎないとのこと
全国99の医療施設で導入されている。
緩和ケアにも利用されている。
・ 副作用はほとんどない。約42度で患部を温めることの患者の負担くらい。
視察先では、温熱療法を併用することにより、抗がん剤の投与量を通常に比べて減らすことができている。
他の病院からの紹介で来る患者もいる。千葉からも来ている。
温熱療法を知れば併用を希望する患者が出るという関係。
温熱療法の効果は、スポーツ医学でも利用されている。
保険適用が開始された90年代に、一時期導入ブームがあったものの、患者が熱さの負担に比べて治療効果を実感出来ないなどの理由(臨床のデータ蓄積も問題か)から、勢いは衰退したようだ。
一部の医師しか知らないようである。
まとめ
エビデンスの集積が課題であるものの、一定の治療効果が認められると考える。基本的に化学療法等に加えて+αで行うものある点から、患者ニーズ(潜在的にも)高いのではないか。緩和ケアとして、さらにスポーツ医学の分野での利用も可能なようであり、後述する難治性がんの治療を含めた広い可能性も持っているようにも思える。
ただし、90年代に導入ブームがあったものの、医療の世界では、一部の医師にしか知られていないマイナーな治療法に位置づけられているようだ。
2.病院経営の観点
<学会の医療技術再評価提案書を参考に計算>
・機器の導入は1台あたり8000万円くらい。医師、放射線技師、看護師の立ち合いが必要として、年間治療人数100人とした場合の、一連の治療経費一人あたり30万0600円、診療報酬9万円又は6万円の平均7.5万円で試算すると・・・
30万0600円-7.5万円×100人=-2256万円:年間赤字
<視察より>
年間治療人数を増やし、患者の回転数を上げることで、収益改善は図れるようだ。
視察先(機器1台):2017年495件、2018年450件。
赤字の程度が病院経営全体に与える影響は少ないようだ。小児科等に比べたらたいしたことないとのこと。
設置の最低限のスペースの確保であれば18平方メートルで足りる(更衣室・シャワー室の併設が理想)。
・ 電磁波対策としての改装は不要。
ハイパーサーミアを使用する理解のある医師の確保が肝要。
機器の使用は簡単なため、放射線技師、看護師でなくても良いとの本音を伺えた。
3.政策的観点
A 治療法(+α)を希望する患者に応える必要は?
→ 近隣では、東京、茨城、埼玉、神奈川、群馬に21施設があるものの、本県には1件もない。視察先の話においても、千葉から東京に通っている人も結構いるようである。標準的ながん治療ではないが、標準治療+αとして行う特徴からニーズが見られ、施設の地域格差を是正する役割を県が果たす必要はないか。
B がん対策推進条例で掲げている、難治性がんの「研究」(13条)に該当する施策に位置づけられないか?
→ 再発卵巣癌、癌性腹膜炎、膵癌、非小細胞肺癌といった難治性の再発・転移癌に対する全身化学療法と、ハイパサーミアを加えた温熱化学療法の有望な第Ⅱ相試験の結果があるとのこと。
「県は、難治性がん等のがんの解明、がんの予防、診断及び治療に関する方法の開発その他の先進的医療の導入に向けた研究についての情報を収集するとともに、その研究を促進するために必要な施策を講ずるものとする(条例第13条)」
C 県の他のがん政策や他の医療政策に負担を与えるか?
→ あまり知られていない治療法(医師を含め)ではあるが、医学的観点に対し、経営的観点での負担の程度は低いのではないか(県立の他の赤字病院との対比)。
D 署名は潜在的なニーズではないか?
→ 治療法(+α)で副作用がないものであるから、あればその多くが温熱療法を希望することが想定される。実際に、署名をしたとする患者、サバイバー、患者の親族からも求める声があった。
<請願採択の理由>
調査チームのメンバーが、前記分析を踏まえて、健康福祉常任委員会で次の通り説明しました。
「まず、医学的観点ですが、電磁温熱治療は、基本的に、放射線治療法や化学治療法などに「加えて」行う、副作用の負担がほとんどない治療法であり、1990年から保険適用を受けています。
また、エビデンスの集積に課題はあるものの、一方で、複数の臨床データにおいて、有効とする一定の治療効果が認められております。
視察先の病院では、抗がん剤の投与量を減らすことができ、QOLの向上に寄与していることが伺え、緩和ケアとしても利用されているとのことでした。
更に文献では、再発卵巣癌、癌性腹膜炎、膵癌、非小細胞肺癌といった「難治性」の再発・転移癌に対する全身化学療法との併用による第Ⅱ相試験の有望な結果もあるとのことです。
続いて、病院経営の観点では、学会の提案書を参考に計算すると、年間2300万円ほどの赤字推計になりますが、患者の数と回転数を増やすことで収益の改善はかなり図れるようです。
視察先の病院でもそのことは伺えており、病院経営全体に与える影響も小さい印象でした。また、スペースも最低18平米ほどで足り、電磁波対策としての室内の改装は不要とのことでした。
そして、政策的観点では、筑波大学付属病院など全国99の医療施設で導入されており、近隣では、東京、茨城、埼玉、神奈川、群馬に21施設ありますが、本県にはありません。
そのため、視察先の病院の話でも、千葉から東京に通っている人が相当数いるようです。
この点は、通院の患者負担や、通うことも困難な県南地域等の実情を考えると、施設の地域格差の是正を行う役割を、広域行政たる県が果たす必要が強いと考えます。
また、がん対策推進条例の第13条で掲げている、難治性がんの「研究」(13条)に該当する施策の一つに位置づけられる可能性もあります。
そして、電磁温熱治療は、標準治療に「加えて」行い、副作用がほぼない特徴を有するため、治療法を知れば希望をする患者が見込まれるため、潜在的なニーズは高く、それが、今回の2万10769人の声に繋がっていると考えます。
以上の観点を勘案して、本請願の採択の賛同を求めます。」
採択については、委員会も、本会議も、全会一致となりました。
<附帯決議を付した理由>
附帯決議の内容と、本会議での説明を御覧いただき、補足をしたいと思います。
まず、附帯決議の内容は・・・、
「県がんセンターへのハイパーサーミアの導入について、県は、県全体に係るがん政策としての議会の意向を踏まえつつ、早急に有識者を交えた医学的観点・経営的観点を加えた具体的かつ詳細な分析を丁寧に行い、判断の合理的理由を速やかに出すこと。またその際、議会に対し、専門的判断に係る具体的かつ詳細な説明を付した報告書を提出すること。」というものです。
その理由に関する本会議での趣旨説明は、次の通りです。
「 電磁温熱治療に対する医学的観点、病院経営の観点、及び政策的観点からの理由を御伝えし、全会一致で採択に至ったところです。
ただし、医学的観点では、文献・論文の分析や、専門家の多角的な検証などが、病院経営の観点では、県がんセンターの各診療科の収益状況等を踏まえた具体的で詳細な分析などが、専門的・技術的な判断が出来る有識者を交えて、更に掘り下げて行う必要があるとも指摘し、当方の限られた範囲内の調査の限界を認めたところです。
執行部もここまでの調査・検討は行っておりません。
この点に関しては、他会派の昨年12月の代表質問を受けて以降の状況からも分かります。導入の詳細な検討を丁寧に重ねてきたとは言い難いものがあります。
また、代表質問の答弁にもあった「対象となり得る患者数の把握」といったニーズ調査は具体的に実施されておりません。
今回の2万1769人の署名からも明らかなように、電磁温熱治療への多くの潜在的なニーズがあります。
標準療法に加えて行うことができる、副作用のほとんどないこの治療法の選択を、何とか県内で可能にという、多くの声に応える必要があります。
緩和ケアの側面でいえば、その充実に関する我が党の山本議員の代表質問においての、「増加するがん患者の需要に対応するとともに、・・・患者や家族の多様なニーズに積極的に対応してまいります。」との答弁と方向性が合致します。
そして、時間的な厳しさという点では、新病院の立替え完了が迫っていることや、請願者のことを現実的に直視する必要があります。
そこで、高度の専門的技術的な判断に踏み込む特殊性、これまでの執行部の取組み状況、及び時間的な制約を、特別な事情として鑑み、附帯決議は、請願の実現に向けて、迅速で、着実な取り組みを担保する内容になっています。とりわけ、報告書の提出は、実行性を高めるものと考えます。
今回の附帯決議を、単に字面と形式で捉えるのではなく、より踏み込んだ本質で捉えていただき、御理解と御賛同をいただきますようお願いを申し上げて、趣旨説明とさせていただきます。 」
以上の趣旨説明を前提に、補足しますと、この附帯決議は、2つの側面で評価が分かれると考えます。
まず、文面から、「導入」という請願を後退させる可能性があると評価される点です。これを理由に委員会では1会派が反対しました。
もう一点は、請願の本質を捉えたうえで、対応への拘束力と実行性を評価する点です。
この点に関し、請願については、採択がされた場合、執行部は、議会の意向を尊重し、誠実に対処することになりますが、請願の中身の実行を強制する力まではありません。
議場のほぼ全員は、この本質を理解しているはずです。
反対した会派は、そもそも請願は、採択で終了とすべきものだ、附帯決議を付けた前例はない、と主張されました。
これに対しては、そもそも前例に捕らわれる必要はなく、時代や請願の内容に合わせて柔軟に対応していくべきです。
加えて、今回は、前例にない特殊な事情も認められます(先ほど趣旨説明のとおり)。
また、今回のケースを、採択で終了とすべきという点については、医学的観点等での掘り下げの必要性を無視しているか、あるいは、そこの判断を断定できる程度にまで徹底的な専門的技術的な調査を会派で行っていることになるはずです。
後者であれば、大変素晴らしいことですが、そうであれば間違いなく証拠を伴って主張・反論を行ってくるはずです。
私の会派では、前者を無視して採択ということはあり得ません。
それは無責任だからです。
請願の審査を「継続」させる選択もありました。しかしそれ以上に、時間的制約を考える必要がありました。
ここの部分は、多くの会派が理解しているところだと思います。
一番楽なのは、たくさんの署名があるから、たくさんの民意があるから採択。以上・・・、終わり。
どの案件にも共通する、一番シンプルで楽な判断です。
しかし、私はそういう単純な思考停止にはなれません。少なくとも、選出いただいた地元の皆様に対し、民意の反映に加えて、様々な民意を統合して、合理的に判断するという議会や議員の役割を放棄することは許されないと思っているからです。
そして、今回、何よりも、請願者が望むことは、請願が「採択」されることではないはずです。その先、つまり、その中身の実現にあるはずです。
どちらが、より中身の実現に向けた前進に繋がるかは明らかです。
多くの議員が、形より実を選んだのだと思います。
そして、先に挙げた特別な事情が認められたことから、附帯決議が例外的に認められました。
時代と状況に合わせた議会の柔軟性を証明できたのかもしれません。
ただし、今回は、委員会と本会議での判断が逆になった会派が出るなど、異例の事態も発生しました。2つの側面の評価をきわどく捉える方がいたのも事実であります。
以上が補足説明となります。
<本会議の終了後に・・・>
会派の政務調査会で、執行部に申し入れを行いました。
請願及び附帯決議を踏まえた迅速な対応と、その期限の確認のためです。
詳細は御伝えできませんが、間違いなく前進していくと思っています。
自分自身で精一杯調べた結果であります。私個人としては、選択の可能性を広げるがんセンターへの導入を望みます。
出来る限り一日でも早く・・・。今後も注視してまいります。
【 毎日がプレゼント 】
今年のクリスマスは、娘に絵本をプレゼントします。
その絵本は、主人公のハリネズミが刻々変化する雲を眺めているところから始まります。
昨日や過去を悔やんでも変わらない。一方で、明日や未来には無限の可能性がある。
では、今日は・・・? 今の日と書く。
今は、英語で「プレゼント」。だから、毎日がとても大切な「贈り物」・・・。
思わず心を打たれた素敵な絵本でした。
いもとようこさんの「まいにちがプレゼント」です。
私も改めて一日一日を大切にし、残された任期の職責をしっかり全うしてまいります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
12月25日、夜更け過ぎ